奥日光の山々の小さな沢から生まれ出た水は、たくさんの滝を下って 大谷川となります。大谷川が長い年月をかけて作った扇状地に、私たちの 住む今市市があります。私たちは、大谷川の豊かな水を、農業に、 暮らしに、さまざまなかたちで利用し生活してきました。この扇状地に 住む人々の命をはぐくむ大谷川は、昔から身近で大切な存在でした。
1964年(昭和39年)に計画された「思川開発事業」は、首都圏の 水不足を解消するため、鹿沼市の南摩地区に巨大なダムを建設するという 構想で始まりました。大谷川から水を取り、「南摩ダム」まで延長20km におよぶ地下導水管で水を送るというものです。
計画が発表されてからすでに36年が経ち、この開発事業は、はじめの 目的を失い、もはや時代遅れの構想となりました。取水によって今市の 農業用水はどうなるのか? 地下に建設される導水管が今市扇状地の地下水を 枯らすのでは? 今市地震の震源近くに計画されている行川ダムの安全性は? 大谷川や行川周辺の動植物への影響は? などなど、疑問符だらけの 「大谷川取水」は、私たち今市市民にとって何のメリットもない、 将来にわたって大きな損失となる計画です。本年3月、今市市役所の 大谷川取水対策委員会は「必要性と安全性を強調する水資源開発公団の 説明には疑問がある」とした最終報告書を発表しています。
大谷川の水は、今市市民の財産です。取水について、市民一人一人が考え、意見を表明することが、いま、必要とされています。「大谷川取水および思川開発事業には問題点が多く、中止すべきである」という意志を、はっきりとした形で示すために、私たちは「今市の水を守る市民の会」を設立することにしました。 「市民の会」は、大谷川取水および思川開発事業中止に向けての活動を行っていきます。それに加えて、「今市の水」をキーワードに、自然環境や農業などについて理解を深め自然と調和した町づくりを考えるための学習会や、市民参加のイベントなども展開していきたいと思います。皆さんの力と声を、ぜひ、「市民の会」にお寄せください。一緒に考え、行動していきましょう。
2000年4月